【特集:残留性化学物質】

農薬のダイオキシン不純物
益 永 茂 樹*

【要 旨】 ダイオキシンの発生源としては,有機塩素系化合物合成での副生が古くから知られていたが,日本では燃焼プロセスが注目されてきた。しかし,日本でも過去に使われた農薬には高濃度のダイオキシンを含有していたものが存在し,現在のダイオキシン汚染の原因の一つとなっていることが明らかになった。それらの代表はペンタクロロフェノール(PCP)とクロロニトロフェン(CNP)で,それぞれ1960年代と1970年代を中心に毒性等価量として毎年20kgTEQ近くが散布されたと推定される。他の農薬からのダイオキシン環境放出はこれらに比べると無視できる程度であったと見られる。東京湾や宍道湖の底質コアの分析結果から,これら農薬による汚染の変遷が再現でき,農地等からの水域への流出は近年も引き続いていると見られた。過去に放出された汚染物,埋設農薬,未使用農薬などストックとしての汚染物質対策も,現在の排出源と同様に重要である。

キーワード: ダイオキシン,農薬,不純物,CNP,PCP
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.5 pp.247-254, 2002
原稿受付 2002.8.9
* 横浜国立大学大学院環境情報研究院
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