【特集:残留性化学物質】

重金属類の環境排出と制御
貴 田 晶 子*・酒 井 伸 一*

【要 旨】 重金属類の大気系・水系・土壌系への排出量について,PRTRパイロット事業および製造業の自主統計に基づき考察した。世界規模での重金属類の環境排出量と起源について過去の報告により概括するとともに,一般廃棄物焼却炉から排出される大気への重金属類について,実測による排出係数と排出量の推定値を示した。有害な物質の環境排出を防ぐには,発生を抑制することが重要であるが,使用削減や代替は完全には望めない。今後PRTRの報告により日本全体の人為的な環境排出量を推定することができることとなるが,化学物質管理の一貫として重金属類を考えるときに,環境排出量のインベントリーを作成すること,またそのために排出源の排出係数の調査や環境モニタリングによる精査が必要と考えられる。

キーワード: 重金属類,PRTR,環境排出量,排出係数,インベントリー,廃棄物焼却
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.5 pp.264-277, 2002
原稿受付 2002.8.30
* (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2