【論  文】

飛灰に含有される重金属のハロゲン化反応による乾式分離特性
中 山 勝 也*・山 本 政 英**・田 中 誠 基**・小 澤 祥 二**・松 田 仁 樹**・高 田   満*

【要 旨】 溶融飛灰に含まれる鉛,亜鉛,銅,鉄などの重金属の乾式分離に対して,塩化水素ガスを用いて重金属を低沸点塩化物とした後,揮発分離することを試みた。
 溶融飛灰,都市ごみ焼却飛灰に含まれる鉛,亜鉛,銅,鉄の揮発挙動を比較検討した結果,反応温度1,173Kにおいて鉛,亜鉛は飛灰種に関係なく98%以上の揮発率が得られ,鉄についても溶融飛灰で85%,都市ごみ焼却飛灰で100%の揮発率を示した。また銅は両飛灰とも鉛,亜鉛,鉄と比べて揮発率しにくいことがわかった。
 溶融飛灰および都市ごみ焼却飛灰の模擬飛灰を作成し,試料調製温度およびNa, K添加量の変化による重金属揮発挙動を調べた。その結果,試料調製温度による鉛,亜鉛,銅,鉄の揮発挙動の相違は見られなかった。Na, K添加量に対して,鉄についてのみNa, K含有量の増加とともに揮発率は減少し,この結果は溶融飛灰および都市ごみ焼却飛灰での鉄の揮発挙動と良い相関を認めた。

キーワード: 重金属,揮発,溶融飛灰,ハロゲン化,塩化水素
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.5, pp.271-278, 2002
原稿受付 2001.9.26  原稿受理 2002.5.21
*新東工業(株) 開発本部 第二環境開発部
** 名古屋大学難処理人工物研究センター
連絡先:〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町
名古屋大学 難処理人工物研究センター 松田 仁樹