【調査報告】

レスポンシブル・ケア活動の理念と現実――山口県の化学産業での活動を事例として――
野見山 里 恵*・外 川 健 一**

【要 旨】 本稿では化学産業の行っている環境・健康・安全に配慮した自主的活動であるレスポンシブル・ケア活動(RC活動)の概要を紹介し,その中でも「化学品安全」と「成果の公表・社会との対話活動」を特に注目すべきポイントとしてあげた。その上で山口県に立地している工場を中心とした聞き取り調査をもとに,RC活動が工場レベルでどのように捉えられているかを明らかにした。
 「化学品安全」=プロダクトスチュワードシップでは,「ゆりかご」から「墓場」がどの範囲を指すのかについての認識が統一されていないことを指摘した。
 「成果の公表・社会との対話活動」では「社会との対話」に着目し,RC活動を支えるカナダ化学品製造者協会の「新しい倫理」と対比しながら,工場レベルでの社会とのリスク・コミュニケーションの現状とその背景を明らかにした。

キーワード: レスポンシブル・ケア活動,プロダクトスチュワードシップ,成果の公表・社会との対話,リスク・コミュニケーション
廃棄物学会誌,Vol. 13, No.5, pp.288-295, 2002
原稿受付 2002.3.27
* 九州大学大学院比較社会文化学府
** 九州大学石炭研究資料センター
連絡先:〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1外川 健一