【要 旨】 廃棄物最終処分場が周辺水環境に与える影響の評価を行うため,本研究では3種のバイオアッセイ(遺伝子毒性試験,ヒト乳癌由来細胞(MCF-7)増殖活性試験,培養細胞毒性試験)を用い,6ヶ月間にわたって廃棄物処分場試料,周辺環境水の毒性監視を行った。また,遺伝子毒性試験umu試験について環境監視に適した試料前処理法と新たな毒性単位を検討,提唱した。その結果,各試料の遺伝子毒性に季節特異的な変動は見られず,浸出水に検出された毒性は生物処理によって周辺環境水程度に低減していた。浸出水のMCF-7増殖活性の平均値は低く,放流先河川への影響はほとんどないと考えられた。細胞毒性試験において濃縮試料も細胞の生存率を50%以上低下させる毒性を示さず,濃縮試料で検出された細胞毒性も,その由来は浸透圧であると推測された。この処理後放流水の細胞毒性の最大値は放流先上流の約9倍であり,放流先河川に全く影響を与えないためには,10倍の希釈が必要であった。
キーワード: 処分場浸出水,遺伝子毒性,MCF-7増殖活性,細胞毒性,モニタリング
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.5, pp.289-297, 2002
原稿受付 2001.6.29 原稿受理 2002.5.31
* (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
** 岡山大学大学院自然科学研究科環境システム学専攻
**† 現:神戸大学大学院自然科学研究科生命科学専攻
*** 岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科
**** 北里大学薬学部公衆衛生学
***** 龍谷大学理工学部物質化学科
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(独)国立環境研究所 循環・廃棄物センター 毛利 紫乃