【要 旨】 本稿では,コンジョイント分析を用いて,廃棄物処分場に対する住民の選好を捉え,処分場設置による社会経済的な負のインパクトを推計した。コンジョイント分析とは,アンケート調査をもとに多属性価値の評価を行う手法である。調査は岩手県盛岡市内に住む一般市民を対象に行った。分析の結果,処分場を水源地の上流に設置することに対して,住民は非常に大きな抵抗を示すことが定量的に明らかになった。また,産業廃棄物の受入れや受入れ範囲の拡大に伴い住民の不快感が高まり,特に岩手県内の一般廃棄物と産業廃棄物に加えて首都圏からの産業廃棄物を受入れる場合には,水源地の上流に処分場が設置された場合の不効用を上回る負のインパクトが計測された。さらに,処分場が自宅から遠ざかることに対して住民は正の評価をするが,そうした効用水準の増加は処分場から約4.72kmの範囲まで見られることが明らかになった。
キーワード: 廃棄物処分場,コンジョイント分析,社会経済的評価,NIMBY
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.5, pp.325-333, 2002
原稿受付 2001.10.25 原稿受理 2002.6.24
* 岩手大学人文社会科学部
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