【要 旨】 塩基度(CaO/SiO2)およびAl2O3の量的変動を指標として用い,それらが1)焼却灰の溶融特性,2)スラグのすり減り減量,3)スラグからの金属類の溶出に及ぼす影響について検討した。試料には6成分系の人工灰(SiO2-CaO-Al2O3-Fe2O3-Na2O-P2O5)を用いた。
実験から,1)では塩基度0.54〜1.07でOthers(=Al2O3+Fe2O3+Na2O+P2O5)量15〜20mol%(Al2O310mol%程度)の範囲に低溶融点域の存在することが観察でき,主要3成分(SiO2-CaO-Al2O3)の影響が支配的であった。2)ではSi, Al, Ca, Oが複合結晶(CaAl2Si2O8(Anorthite),Ca2Al2SiO7(Gehlenite), Ca2SiO4(Larnite))として析出している結晶質スラグであればすり減り減量
は30%以下となった。3)ではPb(人工灰にPbOとして0.3mol%添加)の溶出濃度は,塩基度0.53〜3.2, Al2O3量6〜15mol%程度の組成で1mg/L以上となった。以上の特性をスパイダーグラフとしてまとめた結果,トレードオフの関係が見られ,軸スケールを使用目的に応じて限定していくことで適切な組成範囲が把握できると考えられた。
キーワード: 灰溶融,塩基度,Al2O3,溶融特性,スラグ品質
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.6, pp.361-369, 2002
原稿受付 2001.11.3 原稿受理 2002.6.27
* 長岡技術科学大学大学院(現 川重冷熱工業(株))
** 長岡技術科学大学環境・建設系
連絡先:〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603-1
長岡技術科学大学環境・建設系 小松 俊哉