【論  文】

埋立処分地の多環芳香族炭化水素類とMCF7細胞増殖活性による安全性評価に関する研究
小 野 芳 朗*・加 納 佐江子*・劔 持 堅 志**・岡 村 秀 雄***

【要 旨】 埋立処分地に埋設される焼却飛灰・底灰の浸出水中への溶出挙動,浸出水の環境影響を検討する目的で,飛灰および底灰に含まれる多環芳香族炭化水素類(PAHs)濃度,溶出・吸着特性およびエストロジェン様増殖活性を調べるとともに,埋立地浸出水および処分地下流の河川水および河川底質中のPAHsの濃度と分布を調査した。飛灰および底灰からのPAHsの溶出は4環以下のPAHsが比較的溶出しやすく,PAHsは焼却灰,底質等に対して強い吸着性を示した。また,浸出水中のPAHs濃度は低く,また排出後に,周辺河川の底質中に吸着し,除去されていた。さらにMCF7細胞を使ったエストロジェン様増殖活性をあわせて適用した結果,同じ抽出法による成分での増殖活性は,理論的な活性の50%程度であることがわかった。

キーワード: 埋立処分地,焼却灰,浸出水,多環芳香族炭化水素類,MCF7細胞
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.6, pp.370-378, 2002
原稿受付 2001.12.3  原稿受理 2002.6.27
* 岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科
** 岡山県環境保健センター環境科学部
*** 神戸商船大学海洋環境管理研
連絡先:〒700-8530 岡山市津島中3-1-1
岡山大学環境理工学部 小野 芳朗