【論  文】

有機性廃棄物の微生物処理過程におけるアンモニアおよびメチルメルカプタンの発生特性
大 迫 政 浩*

【要 旨】 有機性廃棄物の微生物処理過程におけるアンモニア(Am)とメチルメルカプタン(MM)の発生特性について,半密閉型空気循環方式の高温発酵処理装置を用いて実験的に検討した。その結果,1バッチ処理における時間的な変動特性は,両成分の見かけのヘンリー定数とそのpH依存性から説明できた。ドッグフードおよび生ごみの連続投入分解試験の結果から,循環空気中のAm濃度はアンモニア性窒素の蓄積とともにpH8程度以上で急激に上昇し,Amの見かけのヘンリー定数の増大とアンモニア性窒素の蓄積が相乗的に影響していた。しかし,同程度の蓄積濃度でも菌床の種類によってpHに違いが見られ,菌床のアルカリ緩衝能(酸度)が影響していた。循環空気中のMM濃度は,ドッグフード分解時の二酸化炭素発生速度と相関があり,また,ドッグフードと生ごみの分解におけるMM濃度の違いは,分解試料中のタンパク質含有の程度が影響していると考えられる。さらに,ドッグフード分解時の窒素の物質収支に関する検討から,含有窒素から転換されたアンモニア性窒素は,pHが低い状況では蓄積するが,蓄積の増加とともにpHが上昇するとアンモニア性窒素の大部分が発散することによって蓄積濃度の増加はほとんどみられなくなり,pHも安定することがわかった。

キーワード: 高温発酵型微生物処理,アンモニア,メチルメルカプタン,pH,ヘンリー定数
廃棄物学会論文誌,Vol. 13, No.6, pp.410-418, 2002
原稿受付 2001.3.23  原稿受理 2002.8.12
* (独)国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
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(独)国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 大迫 政浩