【特 集:産業廃棄物税】
産業廃棄物税の理論的根拠と制度設計
諸 富   徹*

【要 旨】 1999年に地方分権一括法が施行されて以来,都道府県や市町村レベルで次々と産業廃棄物税導入の条例制定が進んでいるにもかかわらず,地方環境税の理論的根拠と制度設計に関するこれまでの議論の蓄積はきわめて薄い。本稿の目的の第1は,この点にできる限り寄与しようという点にある。環境税がなぜ国税としてではなく,地方税として実施されるのが望ましいのか,そしてそれはどのような条件の下で成功するのかを検討する。また,産廃税が多くの都道府県で実現されていくにつれて,新たな問題が浮上しつつある。それが「団体間二重課税」と呼ばれる問題である。本稿の目的の第2は,これらの諸問題を解決する上での指針を,既存の自治体の制度設計に学びながら導き出すことである。本稿ではこれらの課題を三重県,北九州市,福岡県,岡山県,滋賀県における産廃税のヒアリング調査および収集資料に基づいて検討することにしたい。

キーワード:産業廃棄物税(産廃税),仕向地原則,団体間二重課税,排出課税,最終処分課税
廃棄物学会誌,Vol. 14, No.4 pp.182-193, 2003
原稿受付 2003. 5. 30
*京都大学大学院経済学研究科助教授
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