【論 文】
浄水ケーキ添加家畜ふん堆肥におけるリン酸溶解性制御とカリウム固定および有機物分解抑制の可能性
横 田 剛*・三 枝 正 彦*・伊 藤 豊 彰*
【要 旨】 産業廃棄物である浄水ケーキを添加した家畜ふん堆肥(浄水ケーキ堆肥)におけるカリウムの溶出抑制,リン酸の溶解性制御および有機物分解抑制効果を,資材無添加堆肥,ポリ塩化アルミニウムを添加した堆肥(PAC堆肥)と比較検討した。
1)資材無添加堆肥ではほぼすべてのカリウムが溶出したのに対し,浄水ケーキ堆肥では溶出が約25%減少した。
2)資材無添加堆肥と比較して,堆肥中の可給性リン酸割合は,浄水ケーキ堆肥では24〜35%減少し,PAC堆肥では38〜42%減少した。
3)作成した堆肥の炭素無機化率における反応速度論的解析の結果,資材無添加堆肥の可分解性炭素割合は,全炭素含量の26.1〜26.3%,浄水ケーキ堆肥では22.6〜22.8%,PAC堆肥では17.4〜21.1%と推定された。
PAC堆肥は,強いリン酸溶解性制御,有機物分解抑制効果が見られたが,発酵条件が悪くなる傾向があった。一方で,浄水ケーキ堆肥は発酵状態も良く,リン酸溶解性制御,有機物分解抑制効果に加えてカリウムの溶出軽減効果も認められた。
キーワード:家畜ふん堆肥,炭素無機化,リン酸,浄水ケーキ,ポリ塩化アルミニウム
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.4, pp.183-190, 2003
原稿受付 2002.10.18 原稿受理 2003.4.4
*東北大学大学院農学研究科附属農場
連絡先:〒989-6711 宮城県玉造郡鳴子町大口字蓮田232-3
東北大学大学院農学研究科附属農場 三枝 正彦