【論  文】
利用形状に応じた拡散溶出試験による廃棄物溶融スラグの長期溶出量評価
肴 倉 宏 史* ・水 谷   聡** ・田 崎 智 宏***・貴 田 晶 子***・大 迫 政 浩***・酒 井 伸 一***

【要 旨】 スラグは路盤材など粒状のまま利用される場合や,コンクリート骨材など材料として成形後に利用される場合が想定される。そのため,長期環境影響の評価法も利用形状を反映できることが望ましい。そこで本研究では,成形体の評価法である拡散溶出試験を,粒状のスラグに適用する方法を新たに検討した。次に,スラグを骨材に用いたモルタルとともに,実際に試験を実施して溶出量を評価した。
 主な成果として,@溶出フラックスの勾配を用いる解析手法を示した。A粒状のスラグの実用球形度を測定し,比表面積を計算する手法を示した。B粒状のスラグの試験結果から,試験用の試料粒径は1〜2mmで十分であること,一部の元素は拡散律速溶出であること,および,pH4希硝酸は蒸留水よりも有効拡散係数を約1桁上昇させることなどを明らかにした。Cスラグを用いたモルタルと標準砂のモルタルとの結果の比較から,使用したスラグ由来の環境影響は極めて小さいことを明らかにした。

キーワード:廃棄物溶融スラグ,拡散溶出試験,有効拡散係数,溶出フラックス,内部拡散
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.4, pp.200-209, 2003
原稿受付 2002.11.5  原稿受理 2003.4.30
*秋田工業高等専門学校
**京都大学
***(独)国立環境研究所
連絡先:〒011-8511 秋田市飯島文京町1-1
秋田工業高等専門学校 環境都市工学科 肴倉 宏史