【論  文】
建設廃棄物埋立における硫化水素ガス発生の可能性と管理法に関する考察
小 野 雄 策*・田 中 信 壽**


【要 旨】 大都市圏から多量に発生する建設混合廃棄物や廃石膏ボード類には多量の有機物が含まれているのが実態である。これらの廃棄物が不適正に処分されると,埋立地で多量の硫化水素ガスが発生してガス中毒による人身事故を引き起こすことがある。そこで,各種の建設廃棄物選別物を用いて嫌気性培養実験を行い,硫化水素の発生条件について考察した。まず,急性毒性が現れるレベルと考えられる硫化水素ガス濃度1,000ppmを設定し,その危険レベルに相当する廃棄物埋立層中の硫化物発生量を求めた。その結果,埋立層の液相pHが7.5において,廃棄物から発生する硫化水素量は約0.13mmol-S/kg-廃棄物(本実験系における液相濃度で0.013mmol-S/L-water)以下に管理する必要があると考えた。この基準で実験結果を考察すると,硫化水素ガス発生の観点で問題となる廃棄物は,建設混合廃棄物選別物では熱灼減量20%以上,廃石膏ボード類選別物では熱灼減量4%以上のものであり,また,両者に共通する基準として,廃棄物溶出試験液のTOC濃度が30mg/L以上のものであることが明らかになった。


キーワード:硫化水素ガス,硫酸塩還元,建設混合廃棄物,廃石膏ボード,埋立処分
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.5, pp.248-257, 2003
原稿受付 2002.6.14  原稿受理 2003.6.6
* 埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理グループ
** 北海道大学大学院工学研究科
連絡先:〒347-0115 埼玉県騎西町上種足914
埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理グループ 小野 雄策