【論  文】
埋立地土壌層における高アルカリ液中Caイオンの吸着
小 野 雄 策*・田 中 信 壽**


【要 旨】 廃棄物の無機化に伴い埋立地浸出水にCaイオンが多量に含まれ,浸出水処理設備などに影響を与えている。そこで,覆土土壌層でのCaイオン吸着現象を検討した。Ca(OH)2溶液を土壌カラムに通水したときのCaイオンの吸着量は火山灰土壌が最も多く,その破過点(C/Co=0.05)での吸着量は300meq/100g-Soil以上であり,Caの吸着とともに流出液は中性化することもわかった。この吸着反応は,土壌中において不解離の状態にある弱酸的な交換基を持つ粘土-OH, 腐植-COOHのH+が,高pHにより解離してCaイオンと交換されるとともに,土壌から解離したH+とCa(OH)2のOH−とにより中和されるものと推定された。さらに,下水汚泥焼却灰溶出液を土壌カラムに通水しCaイオン吸着量を測定したところ,当初にC/Co(溶出量/添加量)=0.4前後までCaイオンが流出する状態が継続した。これは,Caイオン量にくらべOHイオン量が0.6当量分しかなく,0.4当量分はCaCl2のような中性塩として流出するためであることを明らかにした。また,本実験に用いた試料条件のもとで下水汚泥焼却灰を3m埋め立てた場合に,Caイオンを火山灰土壌に吸着させるためには約0.5mの覆土厚が必要であった。


キーワード:カルシウムイオン,覆土層,火山灰土壌,吸着反応,焼却灰埋立地
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.5, pp.268-277, 2003
原稿受付 2002.9.30  原稿受理 2003.7.9
* 埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理グループ
** 北海道大学大学院工学研究科
連絡先:〒347-0115 埼玉県騎西町上種足914
埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理グループ 小野 雄策