【論 文】
ヒメダカを用いた埋立処分場浸出水の安全性評価手法の構築
尾 崎 夏 栄*・柏 田 祥 策**・鑪 迫 典 久***・小 野 芳 朗*
【要 旨】 現在,埋立処分場浸出水およびその処理水の環境への安全性は化学分析結果により評価されている。しかし化学分析結果から推察される毒性影響では分析および評価できる化学種に限界があり,未知の化学物質を含む浸出水の包括的な安全性評価はほぼ不可能である。本研究では,埋立処分場浸出水の包括的な生態影響評価手法の構築を目的として,ヒメダカを用いた1)稚魚および成魚に対する致死毒性試験および受精卵に対する孵化阻害試験,2)CYP1A活性測定試験,3)雄メダカ成魚に対するビテロジェニン誘導試験を行った。その結果,埋立処分場浸出水に含まれる化学物質のうち,致死毒性および孵化阻害を与える化学物質または多環式芳香族炭化水素などの化学物質は,汚水処理により急性的影響を与えないレベルにまで低減された。しかし催奇形性または内分泌攪乱性を持つ化学物質の除去には効果が低く,放流先河川の生息生物への影響が示唆された。
キーワード:ヒメダカ,浸出水,EROD,ビテロジェニン,生態影響
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.5, pp.278-287, 2003
原稿受付 2003.1.9 原稿受理 2003.7.15
* 岡山大学大学院自然科学研究科
** Nicholas School of the Environment and Earth Sciences, Duke University, USA
*** (独)国立環境研究所
連絡先:〒700-8530 岡山市津島中3-1-1
岡山大学環境理工学部 小野 芳朗