【論  文】
キレート溶液洗浄法による飛灰中の重金属と無機塩類の同時処理
今 岡   務*・山 家 通 宏**・西 嶋   渉**・岡 田 光 正**・井 上 雄 三***


【要 旨】 飛灰中の重金属の安定化と無機塩類の除去を同時に行うことを目指し,キレート溶液を用いて飛灰を洗浄するキレート溶液洗浄法について基礎的な検討を行った。実験に用いた乾燥飛灰(キレート処理を施していない電気集塵灰)から高濃度で溶出した重金属はPbとZnであったが,飛灰重量に対して10倍量の蒸留水に飛灰重量の10%のキレート剤を添加して攪拌することにより,溶出量のそれぞれ100%,90%を不溶化することができた。しかしながら,現行の混練り法での添加量(3%)と比較して多量であるため,その低減が本法の大きな課題とされた。無機塩類については,Na, K, Clは飛灰に対して2倍量のキレート溶液で完全に溶出できたが,洗浄液量が小さいと洗浄飛灰の水分中に残留するため80%以上の洗出しを行うためには20倍程度の洗浄液量が必要であった。CaSO4の溶解度が低いことからCa, SO4の飛灰からの溶出量は洗浄液量にほぼ比例し,100倍の洗浄液量でも十分ではない可能性が示された。また,20倍量のキレート溶液洗浄により,飛灰重量の37%に相当する塩類の洗出しがあり,埋立飛灰の減量化に寄与できるものと考えられた。


キーワード:飛灰,重金属,無機塩類,キレート溶液洗浄法,減量化
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.5, pp.288-295, 2003
原稿受付 2001.8.27  原稿受理 2003.7.17
* 広島工業大学環境学部環境情報学科
** 広島大学大学院工学研究科
*** (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 最終処分技術研究開発室
連絡先:〒739-5193 広島県広島市佐伯区三宅2-1-1
広島工業大学環境学部環境情報学科 今岡 務