【論 文】
溶融スラグによる鉛の不溶化に及ぼすpHおよび陰イオンの影響について
藤 田 幸 生*・島 岡 隆 行*・見 目 誠 造**
【要 旨】 溶融スラグによって,鉛イオン濃度が低下する要因を検討した結果,それは沈澱反応によるヒドロオキシ炭酸鉛等の生成の鉛の不溶化であることを既に明らかにした。
今回,溶融スラグの代わりにスラグ溶出液を使用して,鉛イオンの不溶化におけるpHおよび陰イオンの影響について検討した。pHは,スラグ溶出液の固液比を変えることにより9.2〜11.4の範囲に調整した。また,陰イオンとしては,焼却灰や有機物に含まれる塩素イオン,硫酸イオン,酢酸イオンおよび硝酸イオンの影響を想定して塩化物,硫酸塩,酢酸塩および硝酸塩の塩類を用いて試験を行った。その結果,ヒドロオキシ炭酸鉛が生成する最適な条件は,スラグ溶出液の固液比が2w/v%で,その溶出液のpH値は10.5前後であった。陰イオンの影響として,塩素イオンはオキシ塩化鉛の一種のラウリオナイトも生成し,その濃度が鉛イオン濃度とほぼ同等以上の場合,ヒドロオキシ炭酸鉛を生成しなくなり,主としてラウリオナイトを生成した。また,硫酸イオンは主として硫酸鉛を生成した。さらに塩素イオンが共存しても硫酸鉛を生成した。酢酸イオンおよび硝酸イオンはヒドロオキシ炭酸鉛を生成した。また,塩類の共存は鉛濃度を低下させる効果のあることが確認された。
キーワード:溶融スラグ,鉛不溶化,pH,陰イオン,化学形態
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.6, pp.312-319, 2003
原稿受付 2002.12.17 原稿受理 2003.8.4
* 九州大学大学院 工学研究院 環境システム科学研究センター
** 栃木県窯業指導所
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九州大学大学院 工学研究院 環境システム科学研究センター 藤田 幸生