【論 文】
小麦フスマからの水素ガスの自然発生
田 口 文 章*・矢 野 玲 子*
【要 旨】 小麦フスマを脱イオン水で湿潤状態にして37℃で一晩保温すると水素ガスを発生した。このフスマから水素が自然発生する条件を検討した。
フスマ40gとトリプチケースソイブイヨン粉末15gを500mLの脱イオン水にけんだくさせた後,ゴム栓をして43〜45℃に保温すると,保温開始6時間前後から発泡が観察され,その後急激に発生するガス量が増加した。さらに培養液をpH5.2に維持すると発生する水素量は約2,400mLと最大になった。フスマ40gを添加した培養系は,水素発酵後約10グラムの重量が減少した。これらの結果から,フスマからは60mL/gおよび消費物質からは240mL/gの水素ガスが発生することが判った。
次にフスマ10g(対照としてグルコース5g)を500mLのPY培地に加えて滅菌し,嫌気性グローブボックス内で水素生成菌AM21B株を接種した。ゴム栓をした後,恒温槽で37℃に保温し培養液pHを5.7に維持して発生する水素量を比較した。10gのフスマからは1,328mL,対照のグルコース5gからは1,776mLの水素が生成された。これらの結果から,10gのフスマから3.75gのグルコースに相当する水素が発生することが判った。なお,フスマから発生したガスの組成は,水素が約70%,二酸化炭素が約28%,窒素と酸素で約2%であった。
キーワード:水素自然発生,水素生成,小麦フスマ,水素生成菌AM21B株
廃棄物学会論文誌,Vol. 14, No.6, pp.329-333, 2003
原稿受付 2003.3.31 原稿受理 2003.8.12
* 北里大学大学院 医療系研究科環境微生物学研究室
連絡先:〒228-8555 神奈川県相模原市北里1-15-1
北里大学大学院 医療系研究科環境微生物学研究室 田口 文章