【論文】

溶融固化スラグの溶解速度と溶液pHおよびスラグ塩基度の関係
前 田 敏 克*・馬 場 恒 孝**・水 野   大*


【要 旨】 SiO2, CaOおよびAl2O3を主成分とする塩基度の異なるスラグ試料について,40℃の酸性からアルカリ性の水溶液中における静的浸出試験を行い,スラグの溶解速度を調べた。なお,溶解速度は,接触する溶液に含まれる元素濃度やpHなどの変化による影響の少ない1日あたりの規格化元素溶解量(初期溶解速度)を用いて比較・検討した。スラグの初期溶解速度はいずれも中性および弱アルカリ性溶液中でもっとも低く,溶液の酸性もしくはアルカリ性が強くなるほど初期溶解速度が増大する傾向が認められた。また,アルカリ性溶液中におけるスラグの初期溶解速度は,塩基度による影響が認められないのに対し,酸性溶液中では明らかにスラグの塩基度が高くなるほど初期溶解速度が増大することがわかった。こうした傾向はスラグを構成する網目構造の溶解特性によって決まることが推察された。


キーワード:浸出挙動,スラグ,初期溶解速度,塩基度,pH
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.1, pp.45-51, 2004
原稿受付 2003.4.11  原稿受理 2003.11.4
* 日本原子力研究所 東海研究所
** 核燃料サイクル開発機構
連絡先:〒319-1195 茨城県那珂郡東海村白方白根2-4
日本原子力研究所 東海研究所 前田 敏克