溶融塩−スラグ間の重金属の分配挙動
柴 田 悦 郎・福 田 和 博・中 村 崇・有 馬 猛・高 須 登実男・伊 藤 秀 行
【要 旨】 焼却灰・飛灰溶融処理炉内の重金属挙動の把握は,効率的な重金属の揮発分離回収を行う上で非常に重要であるが,静的な溶融条件下では,その挙動は溶融塩とスラグの相分離における両者間の重金属の分配挙動に強く関係していると考えられる。そこで,本研究では,灰溶融処理における重金属揮発の重要な因子となる溶融塩とスラグ間の重金属分配値(LM=(mass%M)salt/(mass%M)slag , M=Pb, Zn)を密封系および開放系にて測定した。その結果,重金属は,溶融塩とスラグ間である一定の分配を保ったまま揮発することがわかった。また,スラグ塩基度の増大とともに,PbおよびZnの分配値は減少し,この機構は,CaCl2による重金属の塩化反応式より説明された。スラグ中に溶解する全塩素(T.Cl)濃度はスラグ塩基度の増大とともに増加した。この反応機構は,溶融塩中の塩素イオンとスラグ中の酸素イオンの交換反応式により説明された。
キーワード:溶融塩,スラグ,重金属,飛灰,灰溶融処理,分配値
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.3, pp.182-190, 2004
原稿受付 2003.4.25 原稿受理 2004.1.20
* 東北大学多元物質科学研究所
** 九州工業大学工学部物質工学科
*† 現在 (株)神戸製鋼所
**† 現在 日本鋳鍛鋼(株)
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東北大学多元物質科学研究所 柴田悦郎