OA機器のプラスチック筐体の劣化検査技術の開発
青 木 利 幸・佐 藤 英 治・林 政 克・宇 野 元 雄・高 木 武 夫
【要 旨】 OA(office automation)機器のプラスチック筐体を再資源化することを目的に,OA機器の筐体に多く用いられているABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂およびハイインパクトのポリスチレンを対象にプラスチック劣化検査技術を開発した。まず,赤外分光光度計を用いて,暴露した2種類のプラスチックについてATR(attenuated total reflection)法で表面の赤外スペクトルを測定した。それらの赤外スペクトルから劣化の影響を最も示す官能基がC=O結合であることを明らかにし,ベンゼン環のピーク強度に対するC=O結合のピーク強度の比を劣化度と定義した。次に,暴露により劣化させたプラスチック(以降,劣化プラスチック)と劣化していないプラスチックを混ぜて射出成形した再生プラスチック試料を製作し,劣化プラスチックの混入によりアイゾット衝撃値が低下することを明らかにして,再生プラスチックのアイゾット衝撃値と劣化プラスチックの混合率との関係を求めた。また,劣化度が劣化深さと相関があることを明らかにした。これらの関係から,バージン材と混合成形できるプラスチックの劣化度の条件を決定する式を導出した。最後に,材質,色および劣化度ごとにOA機器のプラスチック筐体を分別するプラスチック劣化検査装置を試作し,本装置を用いて,使用済みパソコンの筐体の劣化度を測定し,使用年数と劣化度の傾向を示した。
キーワード:プラスチック,リサイクル,再資源化,劣化,検査
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.3, pp.191-199, 2004
原稿受付 2001.10.19 原稿受理 2004.1.22
* (株)日立製作所 機械研究所
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青木 利幸