アルキルキサンチン誘導体によるパラジウムの高選択的抽出に関する研究
貝 掛 勝 也・馬 場 由 成
【要 旨】 お茶やコーヒーに含まれるカフェイン・テオフィリン・テオブロミンのようなキサンチン誘導体(=RN)を抽出剤として用い,酸性塩化物水溶液からのパラジウムに対する抽出平衡を30℃において実験を行った。キサンチン誘導体は,白金のような貴金属や,銅などの卑金属を含む溶液から高選択的にパラジウムのみを抽出することが明らかとなった。パラジウムの抽出平衡の化学量論関係は,塩酸濃度,塩化物イオン,水素イオン濃度,抽出剤濃度の影響を調べた結果,次式で表されることが明らかとなった:PdCl2+2RN⇔PdCl2(RN)2。パラジウムに対しておよそ25倍量の白金や銅を含む溶液からもキサンチン誘導体によって選択的にパラジウムのみを抽出した。さらに,抽出後のパラジウムを含む有機相からの逆抽出もアンモニア水あるいはチオ尿素水溶液を用いることで容易にパラジウムを含む水溶液を得ることができた。パラジウムの逆抽出は1回のバッチ操作で約60%以上の逆抽出率を示した。
キーワード:カフェイン,キサンチン誘導体,パラジウム,選択的抽出,逆抽出
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.3, pp.224-230, 2004
原稿受付 2003.6.4 原稿受理 2004.2.18
* 宮崎大学工学部 教育研究支援技術センター
** 宮崎大学工学部物質環境化学科
連絡先:〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1
宮崎大学工学部 貝掛 勝也