【特 集:無機系廃棄物のリサイクルと資源回収】
無機廃棄物の生活環境材料への転換
逸 見 彰 男*

【要 旨】 石炭灰,製紙スラッジ焼却灰,活性汚泥焼却灰などは,無機廃棄物の主要なものである。持続的な発展を可能にし循環型社会を構築するためには,これら廃棄物の新規なリサイクル技術を開発することが不可欠である。こうしたなかで,石炭灰に代表される無機廃棄物をゼオライトに物質変換できることがわかった。ゼオライトは,陽イオン交換容量や比表面積が大きく,活性な表面を有し吸着能が大きいことなど数々の機能的利点を持つ物質である。ゼオライトに変換すると,様々な産業分野で利用できる新しい機能性素材となるのである。とくに,ゼオライト転換した石炭灰は,従来の合成ゼオライトおよび天然ゼオライトに対して,「人工ゼオライト」と称されるようになった。人工ゼオライトは,その有用機能を活用して,環境改善,生物利用工業・バイオテクノロジー,農畜水産,土木建築,都市環境整備・都市計画,公衆衛生,新素材など様々な分野での有効利用が可能である。

キーワード:廃棄石炭灰,人工ゼオライト,リサイクル資源,ゼロエミッション,循環持続型社会
廃棄物学会誌,Vol. 15, No.4 pp.203-212, 2004
原稿受付 2004.5.17
*愛媛大学農学部生物資源学科 生物資源化学講座
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