廃棄物埋立地浸出水の短期曝露によるヒメダカ(Oryzias latipes)への影響
土 井 麻記子†・深 津 和 彦・篠 原 亮 太・花 嶋 正 孝・樋 口 壯太郎・友 田 啓二郎
【要 旨】 近年,最終処分場が地域住民にとって受け入れがたいものとなっている要因として,最終処分場浸出水による地下水汚染や排水の長期的な安全性に対する不安があげられる。筆者らは,生態系に対する最終処分場排水の長期モニタリング手法の開発の基礎研究として,処分場浸出水および処理水のメダカに対する急性致死毒性と2および3週間の曝露試験を行い再生産能力への影響について検討を行った。化学分析の結果,エストロジェン様物質としてベンゾフェノン,ノニルフェノールおよびビスフェノールAが検出された。浸出水試料の急性致死毒性は,重金属,塩類およびアンモニアの濃度では説明がつかず,TOC成分に由来するものであると考えられた。埋立経過日数の異なる浸出水で半数致死濃度をTOCで比較したところ,TOC濃度が高い浸出水ほど毒性が強く,汚濁負荷の減少に伴ってTOC成分由来の致死毒性が低下している傾向が認められた。TOC濃度が1,360mg/Lの浸出水原水を2, 4, 8および16%濃度に希釈した試料水に成魚を2週間曝露させた結果,8, 16%濃度区で肝体指数の増加が認められた。しかし,これら浸出水試料,処理水によるVTG誘導は認められなかった。一方,2%濃度の浸出水,処理水による繁殖試験を行ったところ,正常な産卵・受精・孵化が確認された。
キーワード:メダカ,浸出水,急性毒性,未規制物質,モニタリング
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.4, pp.294-301, 2004
原稿受付 2002.12.9 原稿受理 2004.3.17
* 熊本県立大学環境共生学部
** 福岡県リサイクル総合研究センター
*** 福岡大学大学院工学研究科資源循環・環境工学専攻
**** 東和科学株式会社 広島本社
† 現在 無所属
連絡先:〒808-0135 北九州市若松区ひびきの2番1号 北九州学術研究都市産学連携センター3階 樋口研究室気付
(福岡大学大学院工学研究科資源循環・環境工学専攻) 土井麻記子