【論文】

溶融スラグによる鉛の捕集に及ぼす二酸化炭素の影響について
藤 田 幸 生*・島 岡 隆 行*・見 目 誠 造**


【要 旨】 溶融スラグおよび陰イオンの共存による鉛の捕集について検討した結果,沈澱反応によるヒドロオキシ炭酸鉛,オキシ塩化鉛の一種のラウリオナイトおよび硫酸鉛等の生成による鉛の不溶化であることを既に明らかにした。
 今回,ヒドロオキシ炭酸鉛中の炭酸イオンの由来を確認するとともに,鉛濃度をさらに低下させるために,二酸化炭素の影響下におけるスラグ共存の効果について検討した。その結果,大気中の二酸化炭素は炭酸イオンとして,溶融スラグによる鉛の捕集におけるヒドロオキシ炭酸鉛の生成に寄与していることを明らかにした。また,ヒドロオキシ炭酸鉛,ラウリオナイトおよび酸化鉛は蒸留水中で,硫酸鉛は水酸化ナトリウム1%溶液中で,二酸化炭素の通気により炭酸鉛に炭酸化されたが,炭酸化に伴い溶液が酸性になると鉛の溶解度が大きくなり鉛濃度は増加した。しかし,結晶質の溶融スラグを共存させて炭酸化を行うと,pHの低下も見られず,鉛濃度が低下していることが確認された。その理由としては,スラグから供給される水酸化物イオンの中和作用やカルシウムイオンによる緩衝作用によって,溶液のpHが低下しなかったことやスラグによる鉛吸着が考えられた。


キーワード:溶融スラグ,二酸化炭素,炭酸化,炭酸鉛
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.4, pp.302-309, 2004
原稿受付 2003.7.15  原稿受理 2004.3.17
* 九州大学大学院工学研究院環境システム科学研究センター
** 栃木県窯業指導所
連絡先:〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
九州大学大学院工学研究院環境システム科学研究センター 藤田 幸生