【論文】
溶融処理過程における低沸点重金属類の挙動に関する熱力学的考察
長 田 昭 一*・長 田 守 弘*・古 角 雅 行**・徳 田 昌 則***


【要 旨】 廃棄物の溶融処理過程における低沸点重金属類の挙動を熱力学モデルに基づくシミュレーションにより解析し,その妥当性をコークスベッド式焼却残さ溶融炉の実証試験結果と比較し,検討した。
 その結果,溶融処理過程における低沸点重金属類の挙動に与える因子としては溶融温度,酸素分圧等の溶融処理条件の影響が大きいことが明らかとなった。特に溶融スラグの有効利用に際して環境安全性の観点から問題となるPbの挙動については以下の知見を得た。
 熱力学モデルシミュレーションでは溶融処理条件として,高温で酸素分圧が低い(強還元)雰囲気ほどPbの揮発が促進され,溶融スラグ中のPbの含有量が抑制されることが明らかとなった。またコークスベッド式溶融炉の実証試験ではPbの大半がガス側へ揮発し,溶融スラグ中のPb含有量は60-70mg/kgと低いことが確認されたが,この値はシミュレーション結果によく一致した。


キーワード:熱力学,溶融炉,廃棄物,重金属,溶融スラグ
廃棄物学会論文誌,Vol. 15, No.5, pp.353-362, 2004
原稿受付 2003.10.6  原稿受理 2004.6.1
*新日本製鐵(株) 環境・水ソリューション事業部
**東京都環境局
***大学評価・学位授与機構 評価研究部
連絡先:〒100-8071 東京都千代田区大手町二丁目6番3号
新日本製鐵(株) 環境・水ソリューション事業部  長田 昭一