【論 文】
乳牛ふん尿を対象とした酸生成相における窒素除去およびその酸生成液を用いたメタン発酵特性
渋 谷 勝 利*・野 池 達 也**
【要 旨】 メタン発酵の普及課題の一つに発酵液の処理がある。この液には,アンモニア性窒素が高濃度に残存し,かつ液中の炭素源が減少していることから,処理の際の難点とされ,経済的な発酵液の処理法が望まれている。そこで,排水中の窒素成分の除去法である生物学的硝化脱窒素法と二相式メタン発酵法を融合させた方法について,乳牛ふん尿を対象に検討した。本処理法では,硝化液を投入有機性廃棄物の濃度調整液として返送し,酸生成槽で脱窒素させ,本来の排水処理量を減少させるものである。硝酸性窒素1g/Lを乳牛ふん尿に添加したが,酸生成液からは不検出であった。この際脱窒素と同時に異化的硝酸塩還元反応が見られた。投入物中の酢酸濃度は酸生成反応後,3.8g/Lから6.8g/Lに増加し本来の酸生成機能を果たしていた。この酸生成液を用いたメタン発酵では,463L/kg-VSのバイオガスの発生がありメタン濃度は64%で酸生成相に脱窒素機能を持たせても影響は見られなかった。
キーワード:メタン発酵,酸生成相,脱窒素,硝酸性窒素,発酵液
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.1, pp.20-27, 2005
原稿受付 2004.4.6 原稿受理 2004.10.5
*清水建設(株) 技術研究所
**東北大学大学院工学研究科土木工学専攻
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清水建設(株) 技術研究所 渋谷 勝利