【論  文】
溶融スラグを用いた難燃物処理装置の開発
――燃焼特性評価基礎試験――
宇 多 信 喜*・佐 川   寛*・松 田 健 志**・瀧 口 智 志**・朝 倉 祝 治***

【要 旨】 原子力関連施設等で保管されている低レベルの放射性廃棄物の内,ゴム,塩化ビニール等に代表される難燃物の減容を少ない空気流量,小規模なオフガスシステムで高速に行うことを目的として,高温下で溶融したスラグに難燃物を投入し,その熱量によって,難燃物を加熱,ガス化すると同時に,残渣分(以下,灰分と呼ぶ)はスラグ内に溶融する新しい処理手法を考案した(以下,スラグ流動床方式と呼ぶ)。本報では本手法による難燃物処理の特性を一般的な処理手法である空気燃焼方式との比較を通じて明らかにした。雰囲気温度,酸素濃度はそれぞれ,1,100℃,21%とし,難燃物の灰分含有率は0〜30%,大きさは2〜5mmの範囲で変化させ,処理中の難燃物質量の時間変化を計測した結果,以下の知見を得た。(1)難燃物の処理時間は灰分含有率とサイズに大きく依存する。(2)灰分の多い難燃物を空気燃焼処理した場合,揮発分の放出の後,固定炭素の表面燃焼に移行し,質量の時間変化(以下,減少速度と呼ぶ)が低下した。一方,スラグ流動床方式では固定炭素の表面燃焼過程において,減少速度の低下を抑制することができ,当該処理時間を短縮できることがわかった。(3)(2)項の要因を検討した結果,スラグ流動床方式では固定炭素の燃焼に伴い,難燃物表面に生成される灰分がスラグに溶融するため,固定炭素が大気と接する機会が多くなり,処理時間が短くなると考えられる。(4)難燃物をスラグ流動床方式で処理した場合,揮発分,固定炭素は燃焼して空気中へ移行し,難燃物中の灰分の大半はスラグ内に残存することがわかった。

キーワード:溶融スラグ,ガス化溶融処理,難燃物,低レベル放射性廃棄物,処理速度
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.3, pp.206-213, 2005
原稿受付 2004.8.11  原稿受理 2005.2.8
* (株)三菱重工業 神戸造船所
** (株)三菱重工業 高砂研究所
*** 横浜国立大学 大学院工学研究院
連絡先:〒652-8585 神戸市兵庫区和田崎町1丁目1番1号
(株)三菱重工業 神戸造船所  宇多 信喜