【特  集:水銀と環境】
石炭燃焼プロセスにおける水銀挙動と対策技術
守 富   寛*

【要 旨】 本稿では,石炭火力発電施設からの水銀排出量,プロセス内の水銀挙動および対策技術の動向について概説する。欧米諸国では石炭火力発電施設に対する煤塵,硫黄酸化物,窒素酸化物に加えて,水銀とPM2.5の将来規制についての議論が活発化している。わが国では煤塵,硫黄酸化物,窒素酸化物に対する排ガス処理装置の普及が火力発電施設からの水銀排出量を抑制している。石炭の水銀は,元素水銀,酸化水銀,および粒子状水銀に分けられ,それぞれ灰中未燃炭素による吸着,排ガス中塩素による酸化,冷却過程で灰への凝集付着と密接に関係する。燃焼プロセス内での水銀は高温場および触媒脱硝装置により酸化され,水可溶性の酸化水銀となり,湿式脱硫装置により水処理系に回収される。電気集塵機により灰付着あるいは未燃炭素に吸着された粒子状水銀が回収され,さらに回収率を上げるためには活性炭吹き込みによる捕捉が有効となる。

キーワード:水銀,石炭燃焼,対策技術,触媒脱硝装置,湿式脱硫装置
廃棄物学会誌,Vol.16, No.4, pp.204-212, 2005
原稿受付 2005.6.13
* 岐阜大学大学院工学研究科
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