【特 集:水銀と環境】
水銀の物質フローと蛍光管リサイクルのあり方†
浅 利 美 鈴*・福 井 和 樹*・酒 井 伸 一*・高 月   紘**

【要 旨】 水銀を含む蛍光管を取り上げ,日本における水銀の物質フロー解析により,有害物質を含む家庭製品の循環システム構築の方向性を検討した。水銀の物質フロー解析より,製品由来の水銀は年間10〜20ton流通しており,うち5tonが蛍光管由来であること,回収される水銀は0.6tonのみで大半が廃棄物として処理・処分されていること,原料段階では100ton以上のレベルで流通しており,年次的に変化が大きいことがわかった。また,蛍光管の循環・廃棄フロー推定より,現在は水銀フロー量として,最終的には焼却と埋立への負荷が大きく,リサイクル量は小さいと考えられた。水銀を含む蛍光管を使用する限りは究極的には蛍光管の全量リサイクルが望ましいが,そのためには,回収への高い参加率や閉鎖系での再生品利用までを考慮に入れた循環システムを実現する必要があり,情報周知や回収システムの検討に加え,何らかの規制策や新たな技術およびビジネスモデルの創出を検討すべきと考えられた。

キーワード:水銀,蛍光管,家庭系有害廃棄物,物質フロー,リサイクル
廃棄物学会誌,Vol.16, No.4, pp.223-235, 2005
† 査読付展望論文
原稿受付 2005.5.10  原稿受理 2005.6.27
* 京都大学環境保全センター
** 石川県立大学
連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学環境保全センター  浅利 美鈴