【論  文】
ヒメダカおよびムラサキイガイを利用した焼却飛灰溶出液の毒性評価
炭 谷 晃 平*・柏 田 祥 策**・窪 田 孝 宏*・尾 崎 夏 栄*・小 野 芳 朗*

【要 旨】 わが国の一般廃棄物の約80%は焼却後処分場に埋め立てられており,焼却飛灰を含む焼却残滓は主要な埋立内容物である。本研究では,焼却飛灰の溶出液に含有される化学物質の有害性を評価することを目的として,ヒメダカおよびムラサキイガイを用いたバイオアッセイを行った。ヒメダカでは,急性致死毒性および孵化阻害を評価し,さらにCYP1A活性およびビテロジェニン濃度を測定した。ムラサキイガイでは,DNA損傷性およびGST活性をそれぞれ評価および測定した。その結果,すべての焼却飛灰の溶出液に,ヒメダカ奇形仔魚の出現およびムラサキイガイのGST活性の誘導,DNA損傷が確認され,また試験した半数以上の試料で弱いビテロジェニン誘導が観察された。これまでの研究で報告されている埋立処分場浸出水におけるヒメダカ奇形仔魚の出現およびビテロジェニン誘導が焼却飛灰溶出液においても確認されたことから,浸出水におけるこれらの影響の原因物質の一部は焼却飛灰由来であることが示唆された。一方,それぞれのバイオアッセイ結果に相関関係は観察されなかったが,目的の異なるバイオアッセイを組み合わせることにより,未知化学物質の混合物である焼却飛灰溶出液の包括的な環境リスク評価の可能性が示唆された。

キーワード:CYP1A,孵化阻害,GST,生態毒性
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.4, pp.295-308, 2005
原稿受付 2004.12.13  原稿受理 2005.4.18
* 岡山大学大学院自然科学研究科
** (独)国立環境研究所
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所  柏田 祥策