論  文】
医療(感染性)廃棄物の中間処理の滅菌効果および安全性の評価
朴   明 玉*・青 山   勳*・田 中   勝**

【要 旨】 医療施設由来の廃棄物には感染性の恐れがあるため,その処理・処分にあたって滅菌・焼却等の中間処理を行うことが義務付けられている。本研究では中間処理方法として現在日本で主に用いられている焼却,オートクレーブ処理,そのほか,電磁波滅菌,UV照射に着目し,その処理残渣の安全性を生菌数試験および一連のバイオアッセイを用いて評価した。また,モデル微生物を用いて中間処理法の処理機能(滅菌効果)の比較も試みた。生菌数試験の結果,焼却処理残渣には細菌・真菌とも検出されておらず,非焼却処理残渣には細菌・真菌とも検出された。モデル微生物を用いた試験にも同様な結果が見られ,焼却処理に比べ,オートクレーブ処理,UV照射処理には病原菌の残存性が認められた。バイオアッセイ試験では,焼却,非焼却処理残渣とも生物への阻害作用が観察され,その中でも紙おむつの焼却灰が相対的に強い毒性を示し,有害物質の残存の可能性が示唆された。またこれらの実験結果は,医療廃棄物の最終処分の前に処理残渣に残存する感染性の微生物と有害化学物質の毒性について考慮しなければならないことを示している。

キーワード:医療廃棄物,感染性廃棄物,処理残渣,バイオアッセイ,安全性評価
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.4, pp.318-324, 2005
原稿受付 2004.11.1  原稿受理 2005.5.2
* 岡山大学資源生物科学研究所
** 岡山大学大学院自然科学研究科
連絡先:〒710-0046 倉敷市中央2-20-1
岡山大学資源生物科学研究所  青山 勳