【論  文】
ABSとポリアミド混合物の油脂添加分解
植 本 邦 彦*・杉 田 篤 史*・田 坂   茂*・相 川   覚**

【要 旨】 アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体に廃食用油(大豆油)を溶媒として熱分解を行う際にポリアミド(PA)樹脂を混合することによりその分解低分子の収率が向上した。さらに,320℃から360℃の範囲で,分解反応の見掛けの活性化エネルギーはPAの混合比率に応じてPAが多くなるほど減少しABS単独での分解においてはEa=61.3kcal/molであり,PA20wt%では41.6kcal/mol,50wt%では27.3kcal/molとなった。ポリアミド単独での分解では,見掛けの活性化エネルギーは86.0kcal/molである。
 また,340℃における分解速度はABS/PA(1/1)>ABS/PA(4/1)>PA>ABSの順であった。すなわち,それぞれ単独の場合に対し混合による低分子化の効果が認められるが,特にABSに対してその効果は大きい。大豆油は,高分子と反応して溶解性と分解を加速する。

キーワード:ABS,ポリアミド,油脂,熱分解
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.5, pp.342-349, 2005
原稿受付 2004.8.24  原稿受理 2005.5.13
* 静岡大学大学院理工学研究科 物質科学専攻
** 東京エルテック(株)
連絡先:〒432-8561 静岡県浜松市城北3-5-1
静岡大学大学院理工学研究科 物質科学専攻  田坂 茂