【論 文】
複合基質からの嫌気性水素生成における回分発酵と連続発酵の比較
河 野 孝 志*・和 田 克 士*・李 玉 友**・野 池 達 也**
【要 旨】 本研究では混合微生物群による複合基質(ドッグフード)を用いた水素発酵の回分実験と連続実験の比較検討を行った。回分実験では35℃で,TS濃度を2%,5%,10%と設定し,制御pHを4.0から7.5まで変化させた結果,ガス発生量が最大となる最適pHはTS濃度により異なり,TS2%では4.5〜5.5,TS5%では5.5,TS10%では6.5であり,TS濃度が高くなると最適pHが高くなった。しかし,水素発生量は100〜112mL/g-VS(最大水素収率1.80mol-H2/mol-glucose)と同程度であった。発酵生成物は最適pHでは酪酸,酢酸が主に生成し,それ以外のpHでは乳酸,プロピオン酸などが生成し複雑な発酵パターンとなった。連続実験ではTS濃度を10%とし,35℃,pH6.5でHRT(6.4〜36.5時間)の影響を確認した。その結果,水素ガス発生速度はHRT12.8時間で最大の1.18L/L/dで,水素収率は0.21mol-H2/mol-glucoseとなった。連続実験ではメタンの発生,プロピオン酸の生成が見られたことから回分実験よりも低い水素収率となった。
キーワード:水素発酵,複合基質,混合微生物群,回分実験,連続実験
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.5, pp.350-359, 2005
原稿受付 2004.8.9 原稿受理 2005.5.17
* (株)タクマ 技術開発部
** 東北大学大学院工学研究科 土木工学専攻
連絡先:〒660-0806 兵庫県尼崎市金楽寺2-2-33
(株)タクマ 技術開発部 河野 孝志