【論 文】
都市ごみ焼却主灰の水熱処理と鉛の溶出抑制機構
臼 井 敏 紀*・佐 藤 眞**
【要 旨】 都市ごみ焼却主灰の水熱固化特性と重金属の溶出挙動を把握するとともに,種々の溶出試験と形態観察分析を通じて鉛の溶出抑制メカニズムの解明を試みた。水熱処理によって実用強度を有する固化体が得られたが,処理条件によっては鉛の溶出は環境基準値を上回った。これは残存する消石灰の溶解に伴い固定化されていない鉛が溶解したためであるが,本研究で提案したキレート抽出法により,環境庁告示46号試験をクリアした固化体であっても含有量の数%以上の鉛が固定化されていないと推定された。また,固定化されていない鉛の溶出が環境庁告示46号試験で抑制されたのは,塩基性炭酸鉛の生成と固体への吸着によることが明らかになった。さらに,SEM/XMAによる形態観察を通じて高い鉛の組成比の板状晶集合体が見出され,トバモライトとは別種の析出晶による鉛の取り込みに加えて,板状晶の生成が鉛の溶出抑制の要因となっている可能性が示された。
キーワード:都市ごみ焼却主灰,水熱処理,鉛,溶出抑制メカニズム,キレート抽出法
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.5, pp.398-408, 2005
原稿受付 2004.9.30 原稿受理 2005.6.9
* (財)科学技術交流財団
** 名古屋市工業研究所
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(財)科学技術交流財団 臼井 敏紀