【論  文】
灰溶融炉における廃プラスチック混焼による重金属揮散促進
河 上   勇*・玉 井 良 孝*・黒 豆 伸 一**

【要 旨】 ロータリーキルン式灰溶融炉の実用機と実証試験機のデータ解析では,投入物中の可燃分が多い程,スラグ中鉛含有量が低下する傾向がある。これは,灰の近傍での燃焼が局所的な高温や還元雰囲気を形成したり塩化水素を発生するために,灰中重金属類の還元揮発や塩化揮発などが促されるためと考えられる。そこで,灰溶融炉を模擬したラボテストを行い,廃プラスチック混合率と飛灰混入率を変化させて,重金属揮散への影響等について調査した。その結果,飛灰混入率が低くなると,鉛やカドミウムなどの揮散率が大幅に低下し,スラグ中重金属が高濃度になる傾向が観察された。こうした領域において,廃プラスチック添加による重金属の揮散促進効果が顕著であった。スラグ再資源化の際に最も懸念される「土壌汚染対策法に係る試験法における鉛濃度150mg/kg以下の規制値」に対しても,廃プラスチックなしの場合に比較して廃プラスチックを混合した場合では,明らかにスラグ品質改善効果が確認された。これらのことから,灰溶融炉における廃プラスチック混焼は,スラグ品質管理上の有効な対策手段となり,ケミカルリサイクルと見なすことができると考えられる。

キーワード:灰溶融,廃プラスチック利活用,スラグ中重金属,重金属揮散促進,ケミカルリサイクル
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.5, pp.419-428, 2005
原稿受付 2004.8.2  原稿受理 2005.6.20
* 住友重機械工業(株) プラント・環境事業本部
** (株)住重環境分析センター
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住友重機械工業(株) プラント・環境事業本部
環境施設事業センター  河上 勇