【論 文】
岩手・青森県境不法投棄物の焼却および溶融特性
佐々木 秀 幸*・安 部 隆 司*・中 南 真理子*・平 野 高 広**・藤 原 智 徳***・藤 原 忠 司****・小山田 哲 也****
【要 旨】 国内最大規模の産業廃棄物が岩手・青森県境に不法投棄された。その処理方法として,セメントの原料化や溶融処理が検討され,セメント原料化としての利用は,既に実施されている。一方,溶融処理に関しては,一般廃棄物の実績はあるものの,不法投棄物を対象とした例はほとんどない。
本研究では,主として溶融処理を念頭に,不法投棄物の性状を調べ,さらに実機を用いた焼却・溶融試験も行って,不法投棄物を溶融処理するにあたっての留意点を整理した。
不法投棄廃棄物の性状は,場所によって大きく異なっていたが,総体的に,主成分は珪素,アルミ,鉄およびカルシウムで,灰分が多く,発熱量は比較した一般廃棄物の1/6程度に過ぎない。塩基度の低いものが多く,溶融助剤を添加して溶流温度を低くする必要がある。
実機試験では,焼却および溶融に伴う有害ガスの発生は認められなかった。また,溶融スラグからの重金属等の溶出はなく,安全性の観点からは,骨材としての利用が可能と思われる。
キーワード:不法投棄物,化学分析,溶融,スラグ,重金属濃度
廃棄物学会論文誌,Vol.16, No.6, pp.492-500, 2005
原稿受付 2004.10.14 原稿受理 2005.7.20
* 岩手県環境保健研究センター
** 岩手県工業技術センター
*** 岩手県盛岡地方振興局保健福祉環境部
**** 岩手大学工学部建設環境工学科
連絡先:〒020-0852 岩手県盛岡市飯岡新田1-36-1
岩手県環境保健研究センター 佐々木秀幸