【論 文】
PVC電線被覆材の熱分解固体残渣中のPb,Cl,S成分の残留挙動
井 上 洋 一*・棚 橋 尚 貴**・小 島 義 弘***・松 田 仁 樹*
【要 旨】 PVC電線被覆材のケミカルリサイクルのための基礎研究として,PVCのN2およびH2O-N2雰囲気下における673〜1,073Kでの熱分解実験を行い,塩素,硫黄ならびに鉛の熱分解固体残渣への残留挙動を検討した。
その結果,CaCO3を含有するPVC試料では,N2雰囲気下では塩素,硫黄,鉛は主にCaCl2,CaSO4,Pbの化合物形態で固体残渣中に残留した。一方,CaCO3を含有しないPVC試料では,熱分解で生成する塩素,硫黄は高温ほど固体残渣からガス側へ移行した。固体残渣中の鉛は低温ではPbCl2として残留し,873K以上ではPbCl2は揮発した。
H2O-N2雰囲気下では,いずれのPVC試料についても固体残渣中の塩素の残留率は高温ほど減少した。硫黄の残留率はほとんど変化しなかった。鉛はPbCl2がPbに還元され,高温ほど固体残渣への残留率は増加した。
キーワード:電線被覆材,ポリ塩化ビニル,鉛,塩素,硫黄
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.1, pp.1-10, 2006
原稿受付 2005.4.4 原稿受理 2005.9.8
* 名古屋大学エネルギー理工学専攻
** 中部電力(株)エネルギー応用研究所
*** 名古屋大学エコトピア科学研究機構
連絡先:〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町
名古屋大学大学院工学研究科 松田 仁樹