【論  文】
水熱反応処理の利用による厨芥を対象としたメタン発酵の高効率化
宮 西 弘 樹*・木 村 彰 宏**・岩 本 雅 志*・石 川 宗 孝***・笠 原 伸 介***

【要 旨】 本研究は,厨芥のメタン発酵処理を高負荷処理することを目的とし,水熱反応処理を前処理としたメタン発酵法を開発した。厨芥の水熱反応処理特性に及ぼす処理条件の影響およびメタン発酵の処理性に及ぼす水熱反応処理の影響を検討した結果,以下の知見が得られた。(1)厨芥の水熱反応処理は,処理温度が高いほど固形物の可溶化が短時間で進むことが確認された。ただし,処理温度が高いほどガス化による溶存成分の減少が,可溶化による増加を短時間で上回ることが確認され,DOCが最大となる処理条件は,160℃,60minであり,処理前の1.5倍程度まで増加した。(2)粉砕処理のみの厨芥と水熱反応処理した厨芥のメタン発酵処理実験を行い,処理性を比較した結果,HRT20日では,大きな違いがみられなかった。しかし,HRT10日では,水熱反応処理を行うことによりSS,POC,TOC分解率において10〜15%程度の向上効果が確認された。また,粉砕処理のみでは運転の困難であったHRT5日においても,水熱反応処理を用いることによりSS,POC,TOC分解率がそれぞれ69,74,72%で処理が可能となり,水熱反応処理の利用によるHRT短縮の可能性が示された。

キーワード:メタン発酵処理,水熱反応処理,厨芥,可溶化,ガス化
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.1, pp.23-30, 2006
原稿受付 2004.12.27  原稿受理 2005.9.22
* 大阪工業大学大学院工学研究科
** 環境エンジニアリング(株)
*** 大阪工業大学大学工学部
連絡先:〒535-8585 大阪市旭区大宮5-16-1
都市デザイン工学科衛生工学研究室
大阪工業大学大学院工学研究科 都市デザイン工学専攻  宮西 弘樹