【論  文】
遠赤外線照射と摩擦帯電を利用した廃プラスチックス中の塩化ビニル樹脂の選別技術の開発
横 山 貞 彦*・宮 澤 一 郎**・位 地 正 年*

【要 旨】 遠赤外線照射後の表面温度の差と,摩擦帯電後の帯電極性の差を利用し,複数の種類のプラスチックの混合物の中から塩化ビニル(PVC)を簡便に選別する技術を開発した。この技術を活用したPVCの選別システムを試作し,その実用性を実証した。遠赤外線を各種のプラスチックに照射すると,その表面の温度差により,燃焼時の発熱量が高いポリエチレン等のプラスチックのグループ(高発熱量プラスチック)と,発熱量が低いPVCやポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックのグループ(低発熱量プラスチック)とに選別できた。次いで,この低発熱量のグループのプラスチックに適切な摩擦帯電処理を施すと,PVCのみをマイナスに帯電させることができ,PVCの選別が可能であることを見出した。この際,PVCを効率的にマイナスに帯電させるために,摩擦媒体の材質と印加する力を制御する必要があった。さらに,遠赤外線照射と摩擦帯電を組み合わせたPVC選別システムを試作し,実廃棄物を用いて評価した。その結果,今回用いた実廃棄物では,実用的な処理速度(60〜120kg/h)において,PVCを選別率100%で選別できることが判明し,本システムの実用性が実証できた。

キーワード:塩化ビニル樹脂,PVC,選別,遠赤外線,摩擦帯電
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.1, pp.69-77, 2006
原稿受付 2004.8.13  原稿受理 2005.10.12
* NEC 基礎・環境研究所
** NEC ファクトリーエンジニアリング
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NEC 基礎・環境研究所  位地 正年