【論  文】
コンポスト化における通気量および腐熟度評価
今 井   剛*・李   華 芳**・浮 田 正 夫*・関 根 雅 彦*・樋 口 隆 哉*

【要 旨】 コンポスト化における通気量の影響(4ケース)ならびに腐熟度評価に関するラボスケールの実験を行った。コンポスト化過程における温度,水分量,pH,総有機炭素量(TOC),揮発性脂肪酸(VFA),アンモニア生成量,微生物の遷移に関する測定・解析を行った。最小の設定送気量(0.007L/min・L)の場合は,コンポスト化初期において比較的多くのVFAが生成し,その結果槽内のpHの低下が起こった。それにより,温度上昇,アンモニアガスの生成が他のケースに比べて遅かった。さらに,コンポスト化に関わる微生物の数がほぼ全期間にわたり最も低くなった。一方,最も通気量の多かったケースについては(0.173L/min・L),微生物の数が最も多かったにもかかわらず,コンポスト化対象物の有機物残存量が最も多かった。これは,通気量の過多による不適切な含水率と発酵熱の過大な持ち出しによって結果的に有機物の分解率が低くなったことによると考えられる。これらの結果から,コンポスト化において通気量は極めて重要なパラメータであることが示され,本研究で用いた実験装置とその実験条件における適正な通気量が0.028〜0.055L/min・Lの範囲にあると推定された。実際の堆肥化プラントから採取したサンプルにおけるジェオスミンの測定値から,易分解性の有機物がほぼ分解された中期段階以降にジェオスミンが減少することが確認された。この特性を利用してジェオスミンを腐熟度評価指標として用いることが可能であると考えられる。

キーワード:コンポスト,腐熟度,通気,ジェオスミン,微生物の遷移
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.1, pp.78-86, 2006
原稿受付 2005.1.27  原稿受理 2005.10.17
* 山口大学工学部社会建設工学科
** 国立保健医療科学院水道工学部
連絡先:〒755-8611 宇部市常盤台2-16-1
山口大学工学部社会建設工学科  今井 剛