【論 文】
養豚廃水の中温メタン発酵処理におけるメタン収率と炭素転換効率の向上
池 田 由 起*・倉 橋 美 彦**・中 村 恒 二**・森 忠 明**・亀 岡 俊 則***
【要 旨】 メタン発酵槽内の微生物濃度を高めるように設計,運転されている養豚廃水の中温メタン発酵処理施設(有効容量:3,100m3)で,HRT19日,VS容積負荷1.7kg/m3/日において,VS除去率は54%,バイオガス発生量は1日あたり3,210m3,メタン含有率は76%で,除去CODあたりのメタン生成量は0.50m3-CH4/kg-CODとなっている。除去VSあたりのメタン収率は0.866m3-CH4/kg-VSで,他事例の1.18〜1.30倍高くなっている。投入水中の有機物の擬似分子式はC12H21O5Nで,メタン発酵処理の結果とよく一致すると報告されている化学量論式によるメタン含有率推計値に対して実測値は1.19倍,除去VSあたりのメタン収率は1.43倍に高まっている。以上の結果は,中温メタン発酵処理において,運転方法によって投入有機物あたりのメタン収率と有機物中炭素のメタンへの転換効率を向上させうることを示している。
キーワード:養豚廃水,中温メタン発酵処理,微生物濃度,汚泥滞留時間,メタン収率
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.1, pp.87-95, 2006
原稿受付 2004.12.7 原稿受理 2005.10.28
* ゾネ・フラウ環境研究所
** (株)モリプラント
*** (財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所
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NPO法人 バイオガスシステム研究会 池田 由起