【論  文】
トランス油中の微量クロロベンゼンのアルカリ水熱分解反応
山 崎 友 紀*・木 下   睦**・小 高 康二郎***・金   放 鳴**・榎 本 兵 治**

【要 旨】 アルカリ水熱反応によりPCBを選択的に分解させることで微量PCBを含むトランス油の再利用を目的とした研究を,モノクロロベンゼンをモデル化合物として用いて実施し,分解率に及ぼす反応パラメータの影響,脱塩素反応挙動,トランス油の反応への影響,トランス油の再利用の可能性について検討した。その結果,(1)トランス油中の微量クロロベンゼンは反応温度400℃,反応時間2minで1N NaOHを用いた場合に99.99%以上分解する,(2)クロロベンゼンの脱塩素反応は加水分解的に進行しフェノールを生成するが,さらにビフェニルも生成する,〓脱塩素反応は270℃以上の温度でKOHを用いた場合にNaOHの場合よりも容易に進行する,(3)脱塩素反応の活性化エネルギーはNaOHの場合135〜137kJmol−1,KOHの場合187kJmol−1であり,トランス油の存在は頻度因子に影響する,等の知見を得た。

キーワード:水熱反応,クロロベンゼン,脱塩素反応,トランス油,PCB
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.2, pp.125-134, 2006
原稿受付 2005.1.28  原稿受理 2005.11.22
* 大阪府立工業高等専門学校
** 東北大学大学院環境科学研究科
*** 東北大学大学院工学研究科学生(現在 ニチアス(株))
連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-20
東北大学大学院環境科学研究科  木下 睦