【論 文】
循環型社会像の比較分析
橋 本 征 二*・森 口 祐 一*・田 崎 智 宏*・柳 下 正 治**
【要 旨】 循環型社会に類似する言葉やその英訳などをレビューすることで循環型社会のイメージの幅について予備的な検討を行うとともに,既存の循環型社会像の違いを3つの視点から比較分析し,持続可能な発展の概念との関係を整理することなどを試みた。結論は以下のとおりである。1)循環という言葉には,経済社会における物質循環や自然の循環のほか,環境と経済の好循環,関係性や命の循環などの意味が込められている場合がある。2)循環型社会の目的としてあげられているものには,環境保全や環境への負荷の低減と,天然資源の消費の抑制の大きく2つがある。3)循環という言葉に込められた意味や,循環型社会の目的,目的を達成するための対策分野から考察すると,既存の循環型社会像は少しずつ異なっている。循環の意味や循環型社会の目的は,持続可能な発展の概念とも深い関係があり,対策分野や対策内容に影響を与えることから,循環型社会について議論するとき,その「循環」の意味するところやその社会の目的を明確にする必要がある。
キーワード:持続可能な発展,自然の循環,経済社会における物質循環,環境と経済の好循環,関係性や命の循環
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.3, pp.204-218, 2006
原稿受付 2005.8.15 原稿受理 2006.3.7
* (独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
** 上智大学
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 橋本 征二