【総  説】

再生製品の環境安全管理に関する現状と今後の展望――建設資材系再生製品に関する評価方法と許容基準――
大 迫 政 浩*・肴 倉 宏 史*

【要 旨】 再生製品の中でも最も量的に多い建設資材系の再生製品を例として,環境安全性に関する評価方法と許容基準の設定の考え方に焦点を当て,現状と展望を述べた。
まず,溶出試験をベースとした環境安全性の評価方法について,特性化試験,判定試験,現場確認試験の三つのカテゴリーに分けて,種々の溶出試験方法の概要を説明し,合わせて欧州における標準規格化の動きを説明した。また,土壌・地下水への環境影響予測を行う場合のモデル化研究についてレビューを行い,溶出試験を再現するための熱力学的化学平衡モデルの適用や土壌・地下水中の移動モデルに関する研究の現状を整理し,現在,それらを統合化する試みがなされ,ORCHESTRAというシステムとして構築されつつあることなどを述べた。
つぎに,再生製品の環境安全性に係る許容基準について,国内の環境JIS化の動きなどを紹介し,従来の環境庁告示46号による土壌環境基準を用いた判断から,より利用状況を考慮し最終製品の形態をベースにした許容基準の考え方に移りつつある点を紹介し,一方で,異なる分野間や地域間で許容基準の項目などが異なり,共通化を図ることの必要性を指摘した。また,許容基準設定のためのアプローチ法について欧州の埋立指令において採用された方法論などを紹介し,さらに,今後わが国でも参考になるであろう欧州建設製品指令(CPD)について概要を紹介するとともに,その中で基準設定の方法論として議論されているORCHESTRAシステムを利用した手順などについて説明した。
最後に,それまでの内外の現状に関する整理を踏まえ,わが国の再生製品の環境安全管理の在り方について,今後の展望を提言としてまとめた。まず,環境安全性に係る評価方法を確立し,標準規格化を図り体系化していくためのシステム規格化戦略について私案を示した。つぎに,環境安全性に係る許容基準設定について,ライフサイクルマネジメントの視点が必要であること,現在最もニーズの高い含有量基準とpH基準に関する考え方の私案を示した。

キーワード:溶出試験,モデル化,システム規格化,ライフサイクルマネジメント,含有量基準
廃棄物学会誌,Vol.17, No.4, pp.206-233, 2006
原稿受付 2006.6.30
* (独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
大迫 政浩