【論 文】
セメント平衡水中におけるスラグの溶解挙動
前 田 敏 克*・馬 場 恒 孝*・水 野 大*・寺 門 正 吾*・喜多川 勇*・沼 田 正 美*
【要 旨】 大量のセメント材が用いられる処分場条件として想定されるセメント環境でのSiO2, CaOおよびAl2O3を主成分とする溶融固化体(以下,「スラグ」という)の溶解挙動を調べるために,溶解指標として少量のホウ素を含むSiO2-CaO-Al2O3-B2O3系非晶質ガラスを模擬スラグとして合成し,セメント平衡水,脱イオン水およびNaOH溶液中におけるスラグ試料の静的溶出試験を90℃でおこなった。その結果,スラグの溶解量は溶液のアルカリ性により増大した。また,セメント平衡水中ではスラグ表面に溶解にともない二次相としてケイ酸カルシウム水和物(以下,「C-S-H」という)の生成が認められた。C-S-Hの生成は,スラグ表面近傍での溶液のアルカリ性を下げる効果はあるものの,溶存Si濃度を抑制するためスラグの溶解を長期にわたって継続させる可能性のあることを示唆した。
キーワード:スラグ,溶解,セメント平衡水,ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H),pH
廃棄物学会論文誌,Vol. 17, No.4, pp.271-280, 2006
原稿受付 2004.9.11 原稿受理 2006.5.7
* (独)日本原子力研究開発機構
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(独)日本原子力研究開発機構 安全研究センター 前田 敏克