【研究ノート】
リンゴ搾汁残渣を有効利用したホタテガイ内蔵廃棄物からのカドミウムの除去プロセスの開発
井 上 勝 利*・Kedar Nath Ghimire*・黄     凱*・大 渡 啓 介*・原 田 浩 幸*・川喜田 英 孝*・森 田   穣**

【要 旨】 ホタテガイの中腸腺廃棄物(ウロ)中には高濃度のカドミウムが含まれている。カドミウムの除去によりウロは肥料や飼料としての資源化が期待できる。pH=1.5の希硫酸によるカドミウムの浸出―柿渋の凝集剤を併用したリンゴ搾汁残渣の吸着剤への吸着―希硫酸による溶離―水酸化ナトリウムによる沈殿・回収より成る除去プロセスを開発した。吸着の支配因子はpHで,浸出液中のカドミウムを完全に吸着・除去するにはpH>4とする必要がある。本プロセスにおいては外部からアルカリを添加することなしに,ウロのタンパク質の加水分解で発生するペプチドやアミノ酸の1級アミノ基が有する水素イオンの吸収機能を利用することにより吸着に適したpHに上昇させることができた。吸着したカドミウムは0.1mol/dm3の希硫酸によりほぼ100%溶離され,水酸化ナトリウムを添加することにより水酸化カドミウムの沈殿として回収された。

キーワード:リンゴ搾汁残渣,ホタテガイ内臓,カドミウム除去,吸着,バイオマス廃棄物
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.4, pp.299-304, 2006
原稿受付 2005.12.26  原稿受理 2006.6.17
* 佐賀大学理工学部機能物質化学科
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佐賀大学理工学部機能物質化学科  井上 勝利