【特 集:アスベスト廃棄物対策】

アスベストの微量分析――電子顕微鏡法を中心に――
神 山 宣 彦*

【要 旨】 アスベストは極めて有用な工業材料・建築材料として20世紀を通して世界中で盛んに使われたが,そのがん原性により2005年までに世界のほとんどの先進国で使用が禁止された。人類はアスベストにより安全と快適な生活を保障されたが,安全な使用方法を開発できず,アスベスト関連疾患による多くの犠牲者を出してしまった。現在,アスベストの負の遺産に対処した諸々の法対策や災害補償・救済が行われている中で,アスベスト測定は重要な対策手段の一つになっている。本稿では,位相差顕微鏡法とX線回折法に加えて分析電子顕微鏡法を紹介した。分析電子顕微鏡法は,建物解体・改修工事周辺や廃棄物処分場周辺の大気中浮遊アスベストの測定とともに建材や天然鉱物等のバルク試料中のアスベストを的確に定性分析するのに極めて有用である。今後,広く普及してゆくことが期待される。

キーワード:アスベスト,X線回折法,位相差顕微鏡,分散染色法,分析電子顕微鏡,建物解体・改修工事,廃棄物処分場
廃棄物学会誌,Vol.17, No.5, pp.263-270, 2006
原稿受付 2006.9.14
* 東洋大学経済学部
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