【特 集:アスベスト廃棄物対策】

アスベスト廃棄物の溶融分解とその分析学的評価に関する研究
酒 井 伸 一*・山 本 貴 士**・野 馬 幸 生**・貴 田 晶 子**・寺 園   淳**

【要 旨】 本研究はアスベスト廃棄物の分解条件・除去条件の探索と分解実証に焦点を絞った緊急研究であり,実用規模施設を用いた高温溶融分解技術の実証的検討,産業廃棄物破砕過程でのアスベストの挙動とその制御の実証的検討,廃棄物処理過程におけるアスベスト分析方法の開発を目的とした。高温溶融処理によって得られたこれまでの溶融スラグにはアスベストが残存していないこと,またこれら施設の排ガス中のアスベスト濃度は十分に低い値であることを確認した。また,破砕施設におけるアスベストの挙動として,破砕設備周辺空気で管理濃度を上回るケースがあったものの,バグフィルタ等適切な除去対策がなされている施設では,排ガス中のアスベスト濃度は十分低い値まで低減できることを確認した。

キーワード:アスベスト,アスベスト廃棄物,無害化,高温溶融処理,破砕
廃棄物学会誌,Vol.17, No.5, pp.290-300, 2006
原稿受付 2006.9.14
* 京都大学 環境保全センター
** (独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学 環境保全センター  酒井 伸一