【総  説】

金属リサイクルの現状と課題
中 村   崇*・柴 田 悦 郎*・白 鳥 寿 一**

【要 旨】 リサイクルは持続可能な発展を支える鍵となる項目の一つである。わが国のリサイクルの状況は特に廃棄物処理を考えた場合,徐々に改善されている。しかしながら,金属素材のリサイクルは,レアメタルよりはリサイクルしやすいベースメタルでも十分ではない。本文では,金属リサイクルの状況と課題についてまとめた。金属リサイクルにおける人工資源の基本概念について,製錬で使用される天然資源と比較しながら検討した。その本質は @収集が経済的でないこと A不純物が不安定であることである。汚染防止をしながら効率のよいリサイクルを促進するために新しいシステムが必要とされている。このために“人工鉱床”の提案を行った。この概念は,これまでとは異なった発想の転換を行った。廃棄物を資源化するために一度管理保管するという。基本思想を示す言葉として“保管物から原料”へをあげている。これは廃棄物を鉱物資源として取り扱うことを基本にしており,この提案の実現により将来の金属資源リサイクルの確保と有害物の不拡散を実現することが可能と思われる。

キーワード:金属リサイクル,レアメタル,天然資源と人工資源,人工鉱床,有害物の拡散防止
廃棄物学会誌,Vol. 17, No.5, pp.301-310, 2006
原稿受付 2006.8.4
* 東北大学多元物質科学研究所
** 東北大学大学院環境科学研究科
連絡先:〒980-8577 仙台市青葉区片平二丁目1番1号
東北大学多元物質科学研究所 中村  崇